日本造血細胞移植学会 日本造血細胞移植学会

ステロイド抵抗性急性GVHDに対するATG治療の成績

研究の主旨

 日本造血細胞移植データセンター/日本造血細胞移植学会の保有する匿名化移植臨床データを用いて、我が国におけるステロイド抵抗性急性GVHD(移植片対宿主病)に対するATG(抗胸腺細胞グロブリン)治療の成績を明らかにします。

研究の目的

 同種造血幹細胞移植(骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植)は様々な血液疾患の患者さんに治癒をもたらしますが、しばしば治療を要する急性GVHDを合併します。急性GVHDに対する標準的な一次治療法はステロイド剤の全身投与です。しかしその有効率は欧米人で40〜60%、日本人で64%に留まっており、有効な二次治療法の確立が切望されています。

 臨床の現場では、二次治療法としてATG、ミコフェノール酸モフェチル、インフリキシマブ、エタネルセプト、大量メチルプレドニゾロン、シクロフォスファミドなど様々な薬剤の投与が試みられていますが、これらのうち我が国で急性GVHD治療薬としての保険適応があるのはATG(商品名サイモグロブリン)のみです。2008年11月に国内販売が開始されました。

 ところが我が国のステロイド抵抗性急性GVHDに対するATG治療の成績をまとめた報告はありません。海外からの報告によればその有効率は30〜50%であり決して満足のいく成績ではありませんが、一方でATG以外の薬剤がこれを上回る成績を残している訳でもありません。興味深いことに、ATG治療の有効率は、再生不良性貧血などの非腫瘍性疾患の患者さんよりも腫瘍性疾患(急性白血病を除く)の患者さんで高く、また皮膚のGVHDを有する患者さんで高いことが報告されています。このことは、ある条件を満たす患者さんにおいてはATG治療の有効率が高い可能性を示唆しています。

 そこで、1)我が国におけるステロイド抵抗性急性GVHDに対するATG治療の成績を明らかにすること、2)ATG治療の有効性に影響を与える因子を同定することを目的として、本研究を計画しました。これらの成果は、臨床現場におけるATGの適正使用に貢献すると共に、今後急性GVHDに対する新たな治療法開発のための臨床試験を計画する上で重要な基盤データになると考えています。そして移植成績向上に寄与すると考えています。

研究の方法

 日本造血細胞移植学会には毎年全国調査されたデータが蓄積されており、既に5万人を超える同種造血幹細胞移植患者さんの臨床データが納められています。日本造血細胞移植学会・平成25年度全国調査報告書によれば、2009年から2012年までに移植後急性GVHDを発症し、ステロイド治療を受けたものの十分な治療効果が得られず、その後ATG投与を受けた患者さんは142人です。但し、臨床データが不十分な患者さんを解析対象から除外することもあり、実際の解析対象人数はこれより減少する可能性もあります。また解析に必要でありながら毎年の全国調査には含まれていない項目を移植施設から追加で情報提供を受け、そのデータも解析します。今回の研究で予定している追加収集データは、ステロイド一次治療に関する項目(ステロイドの種類、投与開始日、投与量、投与日数)、ATG二次治療に関する項目(ATGの種類、投与日、投与量、併用ステロイドの種類と投与量、感染症合併の有無、三次治療の有無、有ればその治療開始日と薬剤名)、急性GVHDに関する項目(ステロイド一次治療開始日およびATG治療中のGVHD重症度)を予定しています。

 そして統計学的手法を用いてデータを解析します。具体的な解析法として、背景因子などを集計してまとめ、χ2乗検定、Fisher検定、Mann-Whitney検定などにより群間比較を行い、cumulative incidence法、Kaplan-Meier法などにより生着率、GVHD発症率、治療関連死亡率、生存率などを求めます。またlog-rank法などでサブグループ毎にそれらを比較したり、competing risk regression analysis、Cox比例ハザードモデルなどを用いて多変量解析を行い、ATG治療の有効率やその後の生存率などに影響を与える因子の同定を試みたりします。なかでも我々が最も注目しているのは、ATG治療による急性GVHD改善率です。

 この一連の作業の中で、患者さん本人にお願いする作業は何もありません。全ての作業は、日本造血細胞移植データセンター/日本造血細胞移植学会や我々研究者が行います。また、この研究は既に行われた治療の結果を過去に遡って調べる研究であり(後ろ向き研究と言います)、これから行われる治療に介入することは一切ありませんので、この研究が患者さんに危険や不利益を与えることはありません。

二次調査研究計画書 (ダウンロードには学会員番号・パスワードの入力が必要です)
倫理審査結果通知書 (ダウンロードには学会員番号・パスワードの入力が必要です)
研究期間

研究期間:倫理審査承認日より2018年3月31日まで
データ提出締切日:2014年9月30日(火)まで

対象施設の連絡責任医師・入力担当者の皆様宛てにメールにてご案内をいたしました。
ご施設での倫理審査の為、締切日までにご提出が難しい場合にはデータセンターまでご連絡ください。

二次調査 調査票 (ダウンロードには学会員番号・パスワードの入力が必要です)
研究機関

日本造血細胞移植学会 ワーキンググループ(GVHD予防法とGVHD WG)

 解析対象に含める項目の選択は名古屋大学医学部附属病院血液内科、江南厚生病院血液細胞療法センター、兵庫医科大学病院血液内科の研究者が共同で作業を行います。また統計解析は名古屋大学医学部附属病院血液内科で行います。日本造血細胞移植データセンター/日本造血細胞移植学会全国調査の移植登録施設のうち、今回の解析対象患者さんの移植を実施した施設も共同研究機関ということになりますが、データセンターから研究者には匿名化されたデータが提供されるため、どの移植施設の移植患者さんであるかを研究者は把握することはできません。

連絡先

 本研究に関する連絡先は以下の通りです。本研究は匿名化データを使用していますので、個人情報漏洩の危険はありません。本研究に疑問のある方は遠慮無く御連絡下さい。

平成26年7月15日
名古屋大学医学部附属病院 血液内科 村田 誠
〒466-8550 愛知県名古屋市昭和区鶴舞町65
Tel: 052-741-2111、Fax: 052-744-2161