声明文

平成14年8月19日
日本造血細胞移植学会
会長  河 敬世
 

 白血病などの難治性血液疾患に対する根治的治療法である造血幹細胞移植は、骨髄移植や末梢血幹細胞移植、さい帯血移植と多様化し、それぞれに適した移植実施例数が大幅に増加しつつある。増加移植例のほとんどは、血縁者間に移植ドナーが見出せない患者の方々に、公的機関である日本骨髄バンクや日本さい帯血バンクネットワークを介して提供された非血縁ドナーからの移植片により行われている。移植を希望するすべての患者の方々に、公平にかつ適正に移植医療を提供するためには、社会が相互に助け合うという理念に基づいて設立された骨髄バンクドナー登録数ならびにさい帯血備蓄数増加が強く望まれる。

 最近、自分自身の将来の病気の可能性に備えて出生後のさい帯血を保存することを目的とする私的会社が営業を開始している。しかし、現在営業を行っている会社のさい帯血の採取や保存方法に関しては技術的な問題点が指摘されており、また実際に移植に必要な量のさい帯血が保存されていないこともあり、その安全性と有用性に関しては疑問をもたざるを得ない。さらに、私的使用を目的として営業を行っているいくつかの会社は、白血病などの難治性疾患に対する社会の不安を背景とし、一方でまだ確立していないさい帯血幹細胞の体外増幅技術や再生医療への応用を謳うなど誇大宣伝も行っている。

  このような状況に対し、日本造血細胞移植学会はさい帯血の至適利用に関して以下のような声明を発表する。

  1. さい帯血の保存事業は、安全性が確保され、実効性がありかつ適正に運用されなくてはならない。しかし昨今の私的目的のために営業活動を行っている事業体に関しては、技術の適格性に疑問があり、なおかつ実効性が未確定の用途を含んだ誇大宣伝を行っていることに日本造血細胞移植学会は強い懸念を表明する。

  2. 移植を目的としたさい帯血の保存事業は、すでに家族内に血液難病の患者が存在する場合などを除き、私的なさい帯血の保存は実効性が極めて乏しく、国が推進するさい帯血バンクネットワークをさらに拡充することが国民的重要課題であることを再確認する。

  3. 私的なさい帯血の保存事業に関しては、しかるべき技術指針や安全性確保のための遵守事項などの規制が必要であり、厚生労働省は速やかに事実関係を調査し、国民の健康を守るためにしかるべき対応をとるべきものと考える。

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